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コインロッカー・ベイビーズ 上 (1)
村上 龍

定価: ¥ 1,575
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おすすめ度:

発売日: 1980-01
発売元: 講談社
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個人的に村上龍小説の中ではベスト3に入る小説
この小説が出版されたのが1984年。
そして、現在2007年になって、数ヶ月前、ある病院だったかで「コウノトリのゆりかご」という、別名赤ちゃんポストが設置された。
僕は村上龍の小説を読んでから、考えるようになったのだが、日本は本当にある一部の人々に「都合の良い」言葉を作るのが得意だと思う。
小説に登場するキクとハシは真夏のコインロッカーに遺棄された。
爆発的な暑さで息を吹き返し、泣き叫び、運よく発見された。
キクとハシは、親に捨てられたのだ。
そして、成長するにつれて親に対する憎悪が目覚めていく。
小説ではなく、コインロッカーにもし本当に自分の赤ちゃんを捨てるというのは、良心の呵責があるだろう。いや、無いのかもしれない。でも、あると信じたい。
これが、「赤ちゃんポスト」となると話が変わってくる。
まず、赤ちゃんは人間という生命体であり、郵便物のような紙や物ではない。
しかし、メディアでの報道と赤ちゃんポストを設置した病院の説明などで、赤ちゃんを手放すという行為に罪の意識が和らいでしまう。
もしも、僕の前に笑いながら「数年前に赤ちゃんポストに赤ん坊を預けちゃった」なんていう女性が現れた、申し訳ない、罵声を浴びせてしまうだろう。
僕個人の話になるが、僕は未熟児で3日間以上、小さな箱みたいな医療機器の中に居たそうだ。
それが、原因なのかわからないが、小学校3年生くらいから、何かを壊したいという破壊衝動が起きるようになった。
それを花火で紛らわせたり、お人形さんごっごみたいなことをやり、和らげていた。
中学、高校と反抗期も無かった。
親族の間で「おとなしい子」というレッテルを貼られた。
でも、どうしてだろう、たまに何かを思いっきりぶっ壊したくなく。
破壊衝動を音楽で紛らわせるようになった。
いろんな音楽を聴くようになった。
この小説に乳児院に預けられて荒れていたキクとハシに「人間の心臓の音」を聴かせるという
描写が登場する。
僕もある時、非常に落ち着く音を見つけた。
ボールペンが紙をなぞる音。
一番僕が求めている音に近かったのは、アニメ 新世紀エヴァンゲリオンのエントリープラグ内の音だ。
エントリープラグというのはコックピットのようなところでLCLという液体で満たされている。LCLは液体だが、その中で呼吸が出来るのだ。
たぶん、母親の胎内を連想して作られたんだと思う。
そのエントリープラグ内では、ブーンブーンと低い音がうなっている。
この音を聞くと、僕は非常に落ち着く。
村上龍のこのコインロッカーベイビーズは僕のフラストレーションを緩和させてくれる素晴らしい作品です。
村上龍の小説には、おそらく村上龍自身の哲学というか、何かに対する怒りや疑問がこめられている。
この小説の中で、僕のお気に入りな文節を抜粋したいと思います。
「立派な映画館で、アメリカに亡命したロシア人バレリーナの恋愛物語を見た。恋を選ぶ
か、バレエと祖国を選ぶか、白鳥の湖を踊りながら主人公が悩む、バカな奴だとキクは思
った。自分が最も欲しいものは何かわかっていない奴は、欲しいものを手に入れることが
絶対にできない、キクはいつもそう考えている。」
「「空車」ランプを点けて次々と通り過ぎるタクシーの群れ、キクにはわからない。
どうして止まってくれないのだろうか、手を上げても素通りしてしまう、このキラキラす
る街のルールは一体何なのだろうか。どうすれば他人とうまく付き合えるのだろうか、金
でも暴力でもなさそうだ。キクが手を拡げて1台のタクシーを止めガラスを割るぞ、と脅
しても運転手はニヤニヤ笑って首を振るだけだ。窓から金を見せて三倍払うと怒鳴っても
ドアを開けてはくれない。キクは体中から力が失くなっていくのがわかった。ゆっくりと
血を抜かれる気がした。こんな無力感は初めてだった。三十分経った頃やっと1台が止ま
った。キクはこのキラキラする街のルールを一つ知った。それは待つことだ。騒がず叫ば
ず暴力を振るわず走らず動き回らず、表情を変えずに、ただ待つのだ。自分のエネルギー
が空になるまで待つことだ。」
「キクの中で古い皮膚が剥がれ殻が割れて埋もれていた記憶が少しずつ姿を現した。
夏の記憶だ。十七年前、コインロッカーの暑さと息苦しさに抗して爆発的に泣き出した
赤ん坊の自分、その自分を支えていたもの、その時の自分に呼びかけていたものが徐徐
に姿を現し始めた。どんな声に支えられて蘇生したのか、思い出した。殺せ、破壊せ
よ、その声はそう言っていた。その声は眼下に広がるコンクリートの街と点になった人
間と車の喘ぎに重なって響く。壊せ、殺せ、全てを破壊せよ、赤い汁を吐く硬い人形に
なるつもりか、破壊を続けろ、街を廃墟に戻せ。」
若い人に是非、読んで欲しい小説です。
廃頽した東京の甘くて苦い空気と大気。
最初の一行目から目を疑った。
鮮烈な書き出しと、
行変更が少ないのにサラサラと読みやすい文。
すべての情景が克明に浮かんでくる
村上龍はそんな書き方をする人なのだと思った。
コインロッカーに捨てられていた赤子・キクとハシ。
不安定な幼年期を催眠術治療を経て
無事双子として里子に出される前半部分。
そして、
行方不明になったハシを探しにキクが上京し、
再会し、東京を生きていく後半部分。
キクが出会うアネモネという少女の透明さが印象的。
鰐を飼っている美少女が住む擬似亜熱帯の空気は、きっと腐りかけた果物みたいに甘く芳しいことだろう。
ヘビーなのにさらっと読める本。
東京の腐敗した空気が懐かしくなります。
村上龍・コインロッカー
限りなく透明に近いブルー、海の向こうで戦争がはじまる、に続く作品です。
「海の向こう」のあとがきで外国人が龍に「大事なのは三作目」と語る場面があります。それもあってか、なくてか、「コインロッカー」は村上龍にとって重要な位置を占める作品でしょう。
「コインロッカー」が多くの読者の心を射止めるのは、わりに正直な作品だからでしょう。「コインロッカー」以後、村上龍は主題を裏に隠す方法をとっているように思えます。特に、「共生虫」、「イビサ」は難解であると思います。
また、「コインロッカー」は村上龍自身の心情を描いていて、それ以降は現在、日本、あるいは世界の抱える「状況」について書かれているような印象を受ける。
それにしても「コインロッカーベイビーズ」、泣ける。感動長編。
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